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試奏したベースのインプレッション

de Gier BeBop 5

ファンクラ大臣さんにカニカニベースしていただきました! オランダの工房De Gierが手掛ける5弦JBモデル「BeBop 5」を今回お借りしました。

実はDe Gierというブランドは、昔……もう20年前に新宿のロックインで一時見かけたことがありました。フェンダーとは正反対のエキゾチックウッドを多用したモダンな工房系ベースという記憶ですが、他のお店では見かけなかったので一本釣りで契約したか、オカダインターナショナルとの繋がりが強いお店っぽかっただったのでその縁で入荷していたのですかね。当時はのぼりやポスターでPRし、ワンコーナーを設けて展開されていました。それが今回、トラッドなthe JBスタイルにお色直しして市場に出てきたことには、色々と感じ入るものがあります。「稼がねばならん、市場に受け入れられねばならん」という制作側のシビアな現実がありますよね。でもね、実際に弾いてみると、単に売れ線に迎合したわけではなく、「長いものには巻かれたくない」というビルダーとしての骨っぽさ、独自のサウンドポリシーが残されているのが伝わります。

アルダーボディ、ローズウッド指板、メイプル1Pネック、リンディPU、ベースブーストプリ。

スペックとしては極めてフェンダー準拠の伝統的な構成です。それにもかかわらず、どこかヨーロッパ風な洗練された佇まいを感じさせるのが実に特徴的です。また、フレット数が21フレット仕様になっている点からは、強い「スラップ礼賛」のメッセージを感じます。「どんどんスラップをやれ」と言わんばかりの設計で、実際のサウンドも実に良好です。弦のゲージが少し細めのライトゲージなのか、特にG弦のプルが驚くほどやりやすく、ストレスなくすんなり指がかかって演奏に集中できます。この元々張ってあった弦が素晴らしくて、自分でも是非試したい。DRのコーティング弦?っていう説があるけどどこの弦かは不明。→ダダリオEXLだそうです。ダダリオこんなに良かったっけ(笑)?

電装系も非常にユニークで考えられていて、プッシュ/プルで切り替えるデュアルトーンは効き方の違いがハッキリ聞き分けられ、狙う音色へ実にスムーズにアプローチできます。片方はなだらかにトーンロールオフしていく上品で汎用性の高いタイプ。そしてもう片方は、周波数が下がる直前にピーク(山)が立つタイプで、音楽的な癖付けに非常に重宝します。ベース自体に見た目のレリック加工こそあれ、音にはいわゆるヴィンテージ特有の「イナタさ」はない。トーンノブをプルした後者を使うことで、あえて少し暴れるサウンド方向へ微調整をかけるといった芸当が可能です。

また、電池を使用するVanderkley製のカスタム回路「Fatboost」は、音の重心を下げたい時やバッファー的に使いたい時など、ライブ現場で威力を発揮する実践的な利便性を備えています。ただ、私のようなライン直・ヘッドホン環境でモニターしてみると、スラップ時であってもパッシブのままの方が音に元気があって好きなトーンだったりするのも面白い発見でした。

本体側の電装系で強烈に音を作り替えるような調整幅は控えめであり、音色の基本はフロントとリアの2ボリュームのバランスを目的に応じて積極的に探っていく必要があります。「思い切ってサウンドカラーをガラリと変えたいなら、足元のストンプ型プリアンプやエフェクターに任せてね」という割り切りを感じさせる設計ですが、これが実に潔い。Low-B弦の出力についても問題なし。弦の鮮度依存なタイプではある(EQ補正がないので)。

同じようなフェンダータイプのスペックであっても、アメリカや日本のベースとはどこか印象が異なり、Sandbergなどにも通じるヨーロッパルシアー独特の好ましいフレイバーが音から感じられます。ヨーロッパのメーカーはどこも、木材の選び方やトーンに対する美学が日米とは違うのだろうかと、改めて興味深く感じさせられます。

ただ少し気になったのは音のフォーカス感で、全体的に少し音が甘く明瞭感に欠けるような感触がありました。Lindy FralinのシングルPU特有のニュアンスなのかもしれませんが、多かれ少なかれフェンダースタイルの本質はこうあるべきなのか? 「この適度な甘さは、アンプで音を鳴らす現場環境でこそ活きるのだ」と、試奏の後半になって腑に落ちました。同時に、後半に感じた明瞭度の甘さというのは、楽器本体のポテンシャルというより現状張られている弦の消耗具合も大きく影響しているように思えます。


市場へのアプローチとしてトラッドなスタイルを纏いながらも、ヨーロッパのビルダーとしての矜持と、独自の電装系のアプローチ。他のモデルも試してみたいね。

(2026/11/01更新)