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試奏したベースのインプレッション

Alembic CMSB Custom 4st

インプレはすっかりこの企画頼りになっていますが、今回はAlembicですよ! スリークエリートで取り扱うようになる前は、楽器屋さんでほとんど見たことがなかった訳ですが、それをじっくり弾く機会を頂きました。牛さんありがとうございます🌝

マホボディ、エボニートップ、メイプルパープルハート5pcネックのエボニー指板。サーキットは当然Alembicオリジナルのもの。

まず持った感じですが重い、ネック太い、ミディアムスケールというのが最初にきます。でも小振りなので、例えばコンターもないんですがなくても取り回しや当たりが辛くない。座奏時の収まりは想像より全然良いですよ。

音を出してみると、ついつい和音を弾いてしまう鳴りのクリアさ。音がツルッと出てくる感じはエボニーの影響かなあ? 思い込みなのか、ブラスのキーンとした音域が強調されている印象。10kあたり? ハーモニクスも出しやすい。一方低音はベタッと、サドウスキーみたいな収まり。仕事できるよ~。ハッキリクッキリな音でファジーな雰囲気は得意じゃない。癖はフィルターで付ける感じ?ミドルの描き方、解像度は違うけどやっぱりTUNEとかはこれを目指したのかねえ。

そいでもってやっぱりね、return to foreverを弾いちゃうしスタンリー・クラークごっこしちゃうわー(笑)。いろんなアルバムで聞いてきたAlembicのサウンド各種が出せるし、まあ逆にその10種類くらいのサウンドバリエーションからは出ないけど、それを弾きたいんだから。

あとこのベースはアタックが強く出てコンプレスした音じゃないんでスラップでも楽しい。スラップのやりづらさはフォームによってはあるだろうけど、ネックとフロントPUの指2本文の隙間でも全然やれる。リアPUがかなり接近しているセッティング。

というかよく見るととんでもなくブリッジが高く、ジョイント部に向かって傾斜がついてました。ファクトリーメンテの後にお借りしているのでこれがデフォルトセッティングなんだね?! 弦の傾斜のせいか、サムピングアップダウンの連射が過去一やりやすいベース。PUのランプ効果もあるのかも。ちょこちょこスラップに向いてますね。ベタッと低音+カキっとしたアタックがあるから、キメでE弦ドンと弾いたときに気持ち良いぜ! give it awayみたいなのも良い感じ(スティングレイとは違う上品な感じね)。

アクティブフィルターが面白くて切り替えできるパッシブよりもカット直前の山が強くてキャラクターがつけられる。アクティブ、パッシブフィルターは全開でも切り替え時に音色が変わりますが、そういうコンセプトのサーキットなんでしょう。初めから無加工の音はない設計。 全開時はザ・ドンシャリ音。

DI直みたいな音が好きかどうかってのはあるね。ワタシは大好きだけどアンプ寄りの音を割合多く混ぜるような人は好きじゃない? フェンダーオーガニックな感じ皆無だからなあ。昔の人が描いた未来予想図みたいな、ベセスダ・ソフトワークスのfalloutの世界観みたいな、古い高級車みたいな立ち位置。

スタジオに持って行って弾いてみました。リッケンバッカー成分あり。カンカンフレットが響くバズもたっぷりあって歪ませる必要を感じない。ギャリンギャリンというやつですな。ジョン・エントウィッスルみたいなサンダーフィンガーな音でるなーアンプだと聞こえ方違うな、と思ってたらこれバズだ…ネックが逆反りしてるの、家では気が付かなかった(後にネック調整をしました)。

PUがシングル(※1)なので音量の変化に幅があって表情豊か。これだけ重いベースだと「コンプレス気味かなあ?木も硬いやつだしなあ」と思っているとシングルPUで気持ち良い。PUバランスがリアの方がかなり音量が大きくて、何でフロントとこんなに差をつけるのかよく分からず。バランサーをフロントに振っていってもあまり音色の変化がないように聞こえるわ。

スタジオで弾いても低音は常にたっぷり、高音もギャンギャン鳴るので、それをフィルターで均していく感じ。ミドルもアクティブフィルターで癖付けできる。結構色々できるぞ。しかもベースからは外れない。

ローはEQでいじれないのですが、ショートスケールなので余計にそういうチューニングをしているのか、たっぷりあります。だからすっごくベースしてる。フィルターで低音を減らすことはできないんだけど、高音を削らなければ重心が上がるバランスを取れる。面白いですね。

アクティブフィルターはカットの手前周波数で6db持ち上げているらしい。これが音をつまむ、ミドルを上げる印象で癖付けなんだけど、素晴らしい仕組み。ワタシが使っているtonestylerもそういうトーンカーブになるので馴染んでいるものです。こっちのほうが素直にワウワウっぽい動作。6dbってかなり乱暴に感じるけど、これはメーカーからの「お高く止まってるだけじゃねえんだよウチは、ナメんなよ」っていうメッセージに感じる。基本はクリア真っ直ぐな音を目指して作っているんだけど、やるときゃやるよと。

ファミコンの低音みたいなグラファイト系のベースに通じるカラーがあるけど、クリアはクリアでもレンジ感はバカ広ではないし、ずっとオープンな鳴り。チリチリしないレンジ感で木材の音を感じるし、Geoff GouldModulusみたいにバルバルしたジャンルじゃないのよね。アメリカンな感じはなく、ヨーロッパっぽい埋めるローなんだけど、上品。

アタックがここまで出てるとメロディを弾きたくなるんで、やっぱStanley Clarkeの使い方になっちゃうよなあ。楽器の特性を全て引き出すようなプレイヤーがすでにいた場合、一本道のレールに自分が乗った感覚がモチベーション低下を促すので好きじゃないのです。多様なベースがあってみんな好きに弾いてる世界であり続けたいな。

セッティングによってはFreedom Custom Guitar ResearchのDulakeの音を連想させられました。あれ似てる所あるぞ。TUNEはじめ日本メーカー製のベースにも被っている部分があちこちにありそうです。You Tubeで聞くmayonesも。

※1 シングルではなく極端にコイルのターン数が少ないハムバッキングPUだそうです。いやはやスゴイねAlembic!


これが個性といわんばかりのアレンビックサウンド。

ベース全体の流行や市場の方向性みたいなところには関係ない場所におわすから、ron wickershamよろしくまるで仙人のような存在ですね。

ベースの概念を広げる楽器はそれだけで優勝です。偉いでしょ。

(2023/11/06更新、2023/11/10追記)